この記事は、アンサーブログと称して、学生からの質問に答える内容にしたとおもいます。
Q.インピンジメントの誘引って何が考えられますか?
と言う質問に対しての知り得る限りの情報を用いて答えたいと思います。
|主な原因として考えられるもの
Impingementと聞いた時に、肩関節で組織同士が衝突(Impingement)する事とイメージはつきます。
では、なぜ衝突するのか。
その問題をクリアにするために、そもそもインピンジメントが起こる原因(誘引)を把握する必要があります。
重要なことは、①肩甲上腕関節そのものに機能不全があり結果としてImpingement(衝突)を生じているケースと②肩甲上腕関節は比較的機能的に保たれているけれど、周囲の関節の影響を受けて結果としてImpingement(衝突)を生じているケースの2つに分類できます。
①肩甲上腕関節の機能不全
肩甲上腕関節の機能不全による症状として、臼蓋に対する上腕骨頭の求心性の低下や肩甲上腕関節の関節包(特に後下方)の硬さによる臼蓋に対する上腕骨頭の骨運動の異常などが挙げられます。*1(Obrique Translation 理論)
臼蓋に対する上腕骨頭の位置が正常に保たれない。という部分は双方の共通した因子になります。
上記の理由から、徒手的介入にて、この状況を正常化させるとで症状が軽減することがあります。
この徒手的介入を評価の中で実施します。
外転抵抗テスト
肩甲上腕関節の動的安定性は、回旋腱板の収縮による動的安定性と、関節包が伸張されることで得られる静的安定性により担保されています。(関連記事はこちら:腱板の評価方法について)
その特性を用いて、回旋腱板の性状を把握することが可能です。
関節包の硬さに対する介入
インピンジメントと関連の高い病変として、特に関節包の後下方に硬さを生じることと関連が高いと報告されています。この考えは、OHMにおけるリリース期以降で、肩甲上腕関節の内旋が生じた際に、上腕骨頭は臼蓋の背側方向へ接点を移しますが、後方関節包に拘縮(伸張性低下)が生じていた場合、上記記載のObrique Translation Mechanismの作動により、正常な関節運動が構成できない事にあると言えます。
つまり、肩後方に硬さがあれば、肩前上方へ骨頭が押し出される形になります。
この異常な骨運動を正常化させる為にも、臼蓋に対する上腕骨頭の位置を修正する李コンディショニングは必須と考えます。
②肩甲胸郭関節の機能不全
次に肩甲骨側の機能不全として、肩甲骨の可動性の低下(制限)とアライメント異常が挙げられます。
評価を通じて、肩甲骨の動きを他動的にサポートする事で、通常の動き(関節運動)が確認できたり、運動時痛に変化があるかを見ていきます。
肩甲骨の可動性の低下(制限)については、最初に肩甲骨の(上肢下垂位での)アライメントを評価した後、側方屈曲・前方屈曲位における状態を評価する事で状態を掴みやすくなります。
また、SATについては上記記載の肩甲上腕関節の評価にも使えますが、肩甲胸郭関節の評価にも応用できます。
肩甲骨のアライメントSSD:Scapula Spine Distance
上肢下垂位で肩甲骨①上角②肩甲棘③下角の3箇所のランドマークと脊柱の棘突起までの距離を測定します。
静的アライメントで肩胛骨の下方回旋が生じている場合、①②の距離が拡大し、③の距離が狭くなっている状況になりやすいと考えられます。
上肢下垂時の肩甲骨のアライメントを評価したら、次は自動運動における肩甲骨の動きを評価します。
*計測は③下角で測定します。
肩甲上腕関節の外転角度が増すと肩甲骨の外転が生じ、③下角と棘突起の距離は開大します。
SAT Scapula Assistant Test*2
このテストは、外転運動時にに肩甲骨の下角をサポートすることで、肩甲胸郭関節の安定性を他動的に付加しているもので、下角を支える方が結果として可動性が高まり、かつ、運動時痛が軽減された際に肩甲胸郭関節の機能不全を疑います。
EPT Elbow Push Test
このテストもSATと同じ様に、肩甲胸郭関節の安定について評価を行うテストになります。**
|まとめ
今回は、肩のImpingementについてまとめてみました。
原因を2つに分類し、評価を進めることでその先にあるリコンディショニングに移行しやすくなると考えます。
評価があってのリコンディショニングであると考えると、原因にアプローチし、根治させる為にも重要な解剖学的・運動学的知識だと言えます。
|参考文献・資料
*1林 典雄:肩関節拘縮の評価と運動療法.運動と医学の出版社.2014.p64.71
*2月間スポーツメディスン:肩甲骨の動きと働き.2018.p6